本当に一瞬の出来事だった。


ガソリンは引火し、あっという間に廃墟を包み込んだのだ。


目の前で炎が燃えがある。


「美緒!!」


あたしは廃墟へ向けて叫んだ。


お願い、出てきて美緒!


「美緒、美緒!!」


炎はゴウゴウと音を立ててあたしの行く手を阻む。


それでもあたしは無理矢理廃墟の中に入ろうとした。


それを阻止したのは、咲だ。


咲はあたしの腕を掴んで離さない。


「離してよ! 美緒が、美緒が……!!」


炎の柱はすでに屋根まで覆いつくしてしまっている。


このままじゃこの建物は跡形もなく燃え尽きてしまうだろう。


中にいる美緒だって……。


「帰るよ」


咲は冷めた声でそう言い、絶叫するあたしを引きずって丘を折り始めたのだった。