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学校を出たあたしはコンビニに立ち寄って水を一本購入した。


それから廃墟へと向かう。


薄暗いその家は相変わらず気味が悪くて、入った瞬間身震いをした。


「美緒。お水持ってきたよ」


美緒は昨日と同じ場所に座り込んでいた。


美緒の前に座ってコンビニで買ってきた水を開封する。


「最近おかしいなことが立て続けに起こってるんだけど、美緒は関係ないよね?」


返事はないとわかっていながら質問をした。


美緒は灰色の目を泳がせるばかりだ。


あたしは小さくため息を吐き出して、美緒の口にペットボトルと近づけた。


少し上を向かせ、薄く開いた唇から水を流しいれる。


すぐに吐き出されるかと思った次の瞬間。


ゴクリ。


と、水を飲む音が聞こえてきてあたしは目を見開いた。


今、水を飲んだ?


慌ててペットボトルを脇において美緒の顔を確認する。


すると、灰色のだった目に輝きが戻り、黒目が出現するのを見た。


あたしは唖然として美緒を見つめる。


「ありがとう。ちゃんと聞こえてたよ」


それは間違いなく美緒の声だった。


少しかすれていたけれど、乾燥した唇が動いたのだ。