咲もなにも言わなかった。


そして真里菜はひとりで教室を出て行ってしまった。


「また真里菜に万引きさせるの?」


光の言葉に驚いて視線を向ける。


「全部あたしがおごってあげるんだから、当然でしょう?」


咲はなんでもないことのように返事をした。


「そりゃそうか。あたしらだって学生でお金なんてないもんね。真里菜が盗んで咲が転売する。そうやってやっと遊べるんだから」


光の言葉にあたしは真里菜の顔色が悪くなった原因を理解した。


3人はいつもこうしてお金を集めて遊んでいたみたいだ。


盗みを働く真里菜が一番リスクの高い仕事を背負わされているみたいだ。


あたしは何も聞いていないふりをして、そっと教室を出たのだった。