そんな扱いをしていたらいつかこの家は崩れてしまうかもしれない。


そんな不安を抱きながらリビングの中に足を踏み入れると、美緒は昨日までと変わらない様子でそこに座っていた。


誰かが入り込んだ形跡もなくて、ひとまずホッと胸を撫で下ろした。


しかし、咲は真っ直ぐに美緒の前まで行くとその前髪を鷲づかみにして顔を上げさせたのだ。


「おいお前、どういうことだよ!?」


返事のない美緒に咲は怒鳴る。


美緒は相変わらず灰色の目を泳がせるばかりだ。


「咲。乱暴はやめて」


横から口を出すと睨まれてしまった。


「絶対様に叶えてもらった願い事は永遠に続く。サイトにはそう書いてあった!」


「で、でも、その書き込みが本当かどうかわからないんだよね?」


それは咲が自分で言っていたことだった。


願いは1日1回までと説明したときのことだ。


できるだけサイトに書かれていることを信じたほうがいいけれど、全部が正しいことだとはわからない。


「ナナは黙ってて!」


咲はそう叫ぶと同時に美緒の頬を殴りつけていた。


椅子に座っていただけの美緒は大きくバランスを崩して、椅子ごと横倒しに倒れてしまった。