名前を呼ばれてそちらへ視線を向けると、涙目になった美緒がいた。


「大丈夫……」


『大丈夫だから心配しないで』


そう言いたかったのに、途中で言葉は途切れてしまった。


首に当たる刃を強く押し付けられたからだ。


少しでも動くと刃が喉を切ってしまいそうな力をこめられていて、あたしは少しも動くことができなくなってしまっていた。


「ほら、立てよ!」


咲が美緒へ向けて言い、同時に美緒の右足を思いっきりふみつけていた。


「いっ!」


美緒が顔をしかめる。


「お前チビで弱いくせに人のこと守ろうとして、うっとおしいんだよ!」


咲は足を踏みつけ、そしてグリグリと押し付けた。


美緒が苦痛に顔をゆがめる。


それを見ているだけであたしの胸は、自分が攻撃されているかのように痛んだ。


「やめて!」


叫んで見ても咲がやめるわけがない。


咲はあたしを見てニヤリと粘ついた笑みを浮かべ、そして美緒の腹部を蹴りつけたのだ。


美緒は体を折り曲げてその痛みに耐えている。