焦りから、口元に妙な笑みが浮かんできていた。


どうすればいいかわからず、自分が混乱していることに気がつく。


「美緒!」


もう1度大きな声で叫んだ、そのときだった。


美緒の体が大きくグラついたのだ。


あたしは咄嗟に立ち上がり、美緒から離れた。


「来たっ!」


咲が目を輝かせて美緒を見つめる。


一体なに?


嫌な予感が胸によぎったとき、美緒のまぶたがゆっくりと押し上げられていったのを見た。


あたしは唖然としてそれを見つめる。


さっき心音を確認したとき、確かに止まっていたはずだ。


「美緒……?」


完全に目を開いた美緒の名前を呼ぶ。


しかし、美緒の目は灰色に濁っていてどこも見ていないようだ。


あたしが何度名前を呼んでも、反応を示さない。


本当に生きているの?


そう考えて美緒の手首で脈を確認する。


脈はとまったままで、少しも動いてはいなかった。