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絶対様になる人間が拷問の途中で死んだりしない。


そんな都市伝説は信じていなかったが、美緒の心臓の鼓動はまだ続いていた。


ここに来たときにはまだ西日が差し込んでいたのに、今ではもう外は真っ暗だ。


「もう夜の10じだよ」


光がスマホで時計を確認し、そう言ったことで咲はようやく手を止めた。


持っていた工具を床に落とすと、ドンッと重たい音が聞こえた。


「そろそろいいかな」


咲は呟き、美緒の脈を確認する。


美緒は完全に意識を手放していたが、その脈はしっかりと打っているようで、咲は満足そうな笑みを浮かべた。


そして、袋の中からナイフを取り出したのだ。


刃渡り30センチはありそうな大きなナイフに息を飲む。


咲は本気でこのナイフを美緒の胸に突き刺す気でいるのだ。


倒れていたあたしはヨロヨロと起き上がり「ダメ」と、声を上げた。


声を出すだけで全身が痛む。


もしかしたら、どこかの骨が折れているかもしれない。