「美緒、美緒」


ささやき続けると、美緒がゆっくりと顔を上げた。


うっすらと開いた目はあたしを映し出している。


「ナナ……」


かすれた声で名前を呼ばれて更に涙は溢れてくる。


もうとめることはできなかった。


なんであたしたちがこんな目に遭わないといけないんだろう。


絶対様だなんて妙な都市伝説を信じ込んだ咲たちに、どうしてこんなことをされないといけないんだろう。


「なにしてんだよ。早くしろ!」


咲がまたあたしの背中を蹴り付けだ。


体が沿って、背骨がボキッと音を鳴らす。


瞬間全身に痛みと痺れを感じたけれど、骨が折れたわけではなさそうだ。


「ナナっ!」


「あたしは平気」


あたしは美緒へ向けて微笑んだ。


美緒が感じている痛みに比べれば、こんなのどうってことはない。


「そんなに自分が絶対様になりたいか?」


咲はそう言ったかと思うと、工具を握り締めて近づいてきた。


あたしは息を飲み、美緒を抱きしめる。