まだこうして笑うことができる。


その間にイジメ地獄から這い出さないといけない。


じゃないとあたしも美緒も、本当に笑えなくなってしまうから。


そんな焦燥感にかられて駅前の道を早足に歩いていたときだった。


「あれ、ナナ?」


後ろから声をかけられてあたしは立ち止まってしまっていた。


立ち止まらず、人違いだという雰囲気を出して駅まで歩けばよかったのに、反射的に体が震えてしまってできなかった。


あたしはぎこちなく振り返る。


そしてそこに立っていた人物を見て、大きく目を見開いた。


「真里菜……」


私服姿の真里菜がそこに立っていたのだ。


ハーフパンツに白いトップス。


その上に上着を羽織っている。


どれもこれも、咲のお古だとあたしはすでに知っていた。


あたしは真里菜を見て数歩後ずさりをした。


それを見た真里菜がすぐに手を伸ばしてあたしの腕を掴む。


それは痛いほど強い力だった。