「そ、そんなことない! まだだよ。まだ叶ってない! だってあたし、美緒がいないと幸せになんてなれないんだから!」


叫びながら必死美緒の体に触れようとする。


けれど、やっぱり触れることはできなかった。


肉体がある時に感じていた腐敗臭も、今は感じられない。


「ナナには沢山の友達がいるから、大丈夫だよ」


そんな……。


「でも、あたしは美緒がいいの!」


あたしは必死で言葉を探す。


美緒を引き止めるための言葉を。


「心配しないでナナ。あたしはいつでもナナを見てる。ナナが不幸になりそうなときには絶対に助けに来る。だってあたしは、絶対様なんだから」


ナナの体が消えていく。


どんどん色が薄くなって、後ろの廊下が見え始めていた。


「いやだよ美緒、行かないで!」


すがりつくと、美緒があたしの体を抱きしめ返してくれた。


感覚はない。


だけどぬくもりに包まれていることがはっきりとわかって、息を飲んだ。