人間でなくなってしまってもまだあたしのことを気にかけてくれる美緒。


クラスで一番小さな美緒は、いつでも体を張ってあたしを守ってくれていた。


「い、いや……っ!」


咲が勢いをつけて立ち上がる。


そのまま逃げ出そうとしたが、美緒が手を伸ばしただけで引き戻されてしまった。


美緒は咲に少しも触れていない。


見えない力が働いているのだ。


咲の体はそのまま空いている窓へと押し付けられた。


上半身が外側にそる。


「やめて! あ、あたしが悪かった! 全部謝るから、だから殺さないで!」


咲が絶叫を上げる。


しかし不思議なことにどこの教室からも、誰かが出てくる気配は感じられなかった。


まるでここだけ別世界になってしまったかのようだ。


「お前が死ねば、すべて終わる」


美緒は感情のない表情で咲を見つめる。


咲の体はジリジリと窓の外へと押し出されていき、すでに床から両足が浮いている状態だった。


あたしは隣の窓から顔をのぞかせて、咲を見た。


咲の顔は涙と鼻水でグチャグチャにぬれている。