「イジメられていたのはナナちゃんなんだから、言ってやればいいのに」


クラスメートたちは不服そうに唇を尖らせる。


あたしはそれに対して苦笑いを浮かべておいた。


「それにしても美緒ちゃんはどこに言ったんだろうね」


この話の流れなら美緒の名前が出るかもしれないと思っていた。


あたしはおかずをゴクリと飲み込んで、クラスメートたちの顔を見た。


みんな不安そうな表情を浮かべている。


「いきなり行方不明になったんだよね?」


「もしかして、イジメが原因?」


その言葉にドキリと心臓が大きく跳ねた。


美緒が廃墟に来たときのことを思い出す。


美緒は咲たちになにか弱みを握られて、そのせいであそこに来るしかなかったんだ。


「ごめん、ちょっとトイレ」


あたしは小さな声でそう言うと、席を立ったのだった。