「美緒、もうどこにも行かないで、ここにいてよ」


そう言うと、美緒は少しだけ悲しそうな表情を浮かべた。


「それは難しいと思うよ。見て」


美緒はあたしに手を伸ばして見せた。


その爪は真っ青に染まっていて、はがれかけている。


「神様になったから腐敗していくスピードもゆっくりだけど、それでも確実に腐って行ってる。ここにいたら、困るのはナナだよ」


「あたしは困ったりなんてしない!」


そう言っても美緒はきいてくれなかった。


「あたしは元々人間で、無理矢理絶対様にならされた。完璧な神様とは違うから、終わりがくる日も、ずっと早い」


「そんなこと言わないでよ!」


「終わりが来と、あたしはただの死体に戻るの。そのときにここにいるわけにはいかない」


美緒の言っていることも意味は理解できる。


あたしに迷惑がかかるからそういう風に言ってくれているのだ。


だけど、美緒がまたどこかへ消えてしまうことが、たまらなく寂しい。


「また、どこかで」


美緒はそう言うと、スッと姿を消してしまったのだった。