俺に似ている……? そんな事考えもしなかった。てっきりあれは祖父が想像で作り上げた少年だと。

 でも、星乃の言う通りなら、まさか――まさか、この少年像のモデルは……。

 俺の考えを読み取ったように、星乃は続ける。

「先輩のおじいさんは形あるものとして残しておきたかったんじゃないでしょうか。愛する家族の姿を。でも、高齢のおじいさんが久々に着手する大型の作品。今の先輩の姿を作るには体力面に不安があったのかも。だから幼い頃の先輩の姿を模した。それに、あの像は最初からあそこに置かれる事が決まっていたんですよね? だから誰かに触れられて悪戯されたりする可能性を防ぐためにも、高い台座に置かれる前提の形状にした。大切な家族の像だからこそ」

 俺は改めてスマホの画面を確かめる。画面をスライドさせていくと、一枚の画像で指が止まった。それは胡坐をかいた祖父の膝に腰掛ける幼い俺。
 その場所で粘土で色々なものを作った、あの頃の俺がそこにいた。目の前の少年像にそっくりな俺が。
 じいさん……あの頃の俺を作ってくれたんだな。全然気づかなかった。教えてくれれば、もっとあの像について話ができたのに。じいさんは無口だったからな……。
 それともじいさんも恥ずかしかったのかな。今更俺の幼少期の像を作るだなんて、照れくさくて打ち明けられなかったのかもしれない。
 スマホから目を上げて星乃を見つめる。

「改めて言わせてくれ。星乃、ありがとう」

 星乃ははにかんだように笑ったあとに、もう充分だとでもいうように小さく首を振った。