翌年の4月。

 新しい門出を祝うかのように、たくさんの桜が綺麗に咲き誇る中。

 真新しい制服に身を包んだ私は、念願だった明陵高校に入学した。

 本当はもっと早くにバスケ部の練習を見に行きたかったんだけど、何だかんだ忙しくてなかなか見に行くことが出来なかった。

「まぁ、坂口先輩は逃げないし……いっか」

 と、そのときは自分を納得させていた。

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 そして、入学式から1週間後。

 ようやく、私はバスケ部の見学に行くことが出来た。

 開いている体育館の扉から、そうっと中の様子を伺う。

 190センチ以上はありそうな、とても背の高い男の人がいる。

 ガタイも立派だ。

 あっ、と思った次の瞬間。









 

 ドガアアアアアアア!!!!!











 その男の人が豪快なダンクを決めた。

 ギシギシと揺れているバスケットリング。

 そして、その男の人は2秒ほどリングにぶら下がったあと、ダンッ! と着地した。

「ナーイスゴリラ!」
「誰がゴリラだゴラァ!!」

(はは、ゴリラか……確かにあの見た目はそれっぽいな。でも、パッと見た感じ先輩っぽいあの人にそんなこと言えるなんて、ここのバスケ部は仲が良いんだなぁ)

 なんて、迫力満点のダンクシュートに圧倒されながらも微笑ましく思った。

(それにしても……)

 体育館の中をキョロキョロと見渡す。

 坂口先輩は、中学では有名人だったらしいから高校ではキャーキャー騒がれていると思っていたのに……私の予想とは裏腹に、騒がれていたのは綾瀬君という同じ1年生の人で、坂口先輩ではなかった。

 それどころか、坂口先輩らしき姿は見えず、名前も聞こえてこなかった。

(うーん……坂口先輩、今日は休みなのかな……?)

 残念、と内心思いながら、私は1時間ほど練習を見てから体育館をあとにした。