神前式でございますから、
新郎は黒の紋付き袴姿で、
新婦様は白無垢でございまして。
そのまま和風ガーデンに
出られますと、早入りされてます
ゲストに一礼をされます。
『皆様、神前にて夫婦の盃を
交わされた新郎新婦さまが、
披露宴前のご挨拶に来られ
ました。お写真を撮られる
ご友人様方は、どうぞ前に』
司会嬢のアナウンスで、
廻廊から東屋に出られた
新郎新婦様の前に、
キャッキャと新婦様のご友人と
おぼしき人だかりが出来ます。
「寿さん。今回の新婦様は、
旅館をされている家に嫁がれる
という事で良かったかな?」
あらあら、課長ですか。
しっかりお客様ファイルは
チェックして頂かないと
きっちりとした
サービスが出来ませんよ。
「はい、さようでございます。
新婦様の嫁がれる先が、何分
格式ある旅館という事です
ので、少し仰々しいかもしれ
ませんが、古式に乗っ取った
花装飾にしてございます。」
そう、
新郎新婦様の様子から
片時も視線を外さず
わたくしは、課長に答えます。
この課長は
春の人事移動で
新しく配属されましたからね、
まだ不慣れなので
ございましょ。
『それでは皆様。新郎新婦様
が御色直し致しまして、
皆様との祝福の宴席に入場
致します。皆様、拍手で
新郎新婦様を、お色直しへ
と送り出し下さいませ。』
『パチパチパチパチパチパチ』
一旦新郎新婦様は退場ですわね。
さて披露宴は、
この和風ガーデンでのオープン
パーティーで、立食形式。
welcomeシャンパンが
先ほどまでウエイターや
ウエイトレスにサーブされて
ましたが、
豪華な華々が彩る円卓に
今度は前菜や料理が
素早く準備されてまいりますわ。
「しかしそれなら、着席のコース
料理なんじゃないのか。立食?
いろいろ面倒事にならないか」
まだ隣にいらっしゃいましたか。
「・・・・・」
他の女性スタッフには
長身で、
人気がある御尊顔かも
しれませんが、
わたくし全く興味ございません。
ので!
察しの悪い殿方には
残念な視線を投げるばかり。
「今回は、新婦様側の元会社より
男女とも同僚様のご出席となり
ましたから、着席スタイルでは
男女別分けやテーブル分けの
問題がございました。立食が
1番ナチュラルスタイルだと」
そう、
本来ならば新郎友人は男性を。
新婦様友人は女性を招待するのが
セオリー。
けれども、今回はたっての希望で
仕事場の同僚を招待客に
リストされた為、
わたくしが考えた結果、
立食スタイル、いわゆる
ビュッフェパーティーで
オープンな披露宴にと
提案したのですわ。
それに、
「着席スタイルでしたら、
何かございました時には、
かえって目立つではございま
せんか。例え心配なくとも、
人が行き来している方が、
スクリーンにもなるのです。」
わたくしは、
最良の場合と、最悪の場合を
常に想定しております。
ですから、課長も
しっかりして頂きたいものです。
「しかし、元彼なんだろ?同僚の
中にいるのは。心配だよ。だって
別れてそんなに立ってないのに、
フラれた元カノの結婚式だよ?
しかも、相手は旅館を継ぐ御曹司
だって聞いたら、たまらんぞ。」
「やめて下さい。課長。すぐ
そこにナカヤマ様がいらっしゃ
いますので、お静かに!」
わたくしが、
課長を嗜めますと、
わざとらしくも、慌てて手で
口を塞ぐ真似などなさる。
「やべ。アイツ?」
だーかーらー。
聞こえると言ってますの!
わたくしは、
目で課長に合図いたします。
わたくしどもの
ウェディング・セレネでは
しっかりと受付カウンターでの
ゲストチェックを行って
全スタッフに共有して
ございます。
ご友人はもちろん、
来賓に、親族様のリストは
徹底的に頭に入れます。
それでなければ
ウェディング・セレネの
コンシェルジュは
務まりません。
もちろん、新婦様からも
お写真を拝見してましたから、
わたくしは
穴が空く程にナカヤマ様の
お顔を存じてございますけど。
課長、わたくし
ナカヤマ様の写真、添付送信
してございますよね?
「出来る限り、 新婦様の近くには
わたくしが控えておきます。
課長も、いざという時は
助力、宜しくお願いします。」
わたくしは、
お気に入りの眼鏡を片手で
スッと整えまして
課長に念押しします。
「え!なに、そんな感じ案件?」
まだ両手で口を抑えて
課長は、目だけで
ナカヤマ様を追いかけます。
本日のナカヤマ様のお召し物。
わたくしの記憶が
正しければ、新婦様に拝借した
『初めてのデート写真』で
ナカヤマ様が着用していた
スーツに見えますのは、
課長には黙っていても
問題ございませんね。
新郎は黒の紋付き袴姿で、
新婦様は白無垢でございまして。
そのまま和風ガーデンに
出られますと、早入りされてます
ゲストに一礼をされます。
『皆様、神前にて夫婦の盃を
交わされた新郎新婦さまが、
披露宴前のご挨拶に来られ
ました。お写真を撮られる
ご友人様方は、どうぞ前に』
司会嬢のアナウンスで、
廻廊から東屋に出られた
新郎新婦様の前に、
キャッキャと新婦様のご友人と
おぼしき人だかりが出来ます。
「寿さん。今回の新婦様は、
旅館をされている家に嫁がれる
という事で良かったかな?」
あらあら、課長ですか。
しっかりお客様ファイルは
チェックして頂かないと
きっちりとした
サービスが出来ませんよ。
「はい、さようでございます。
新婦様の嫁がれる先が、何分
格式ある旅館という事です
ので、少し仰々しいかもしれ
ませんが、古式に乗っ取った
花装飾にしてございます。」
そう、
新郎新婦様の様子から
片時も視線を外さず
わたくしは、課長に答えます。
この課長は
春の人事移動で
新しく配属されましたからね、
まだ不慣れなので
ございましょ。
『それでは皆様。新郎新婦様
が御色直し致しまして、
皆様との祝福の宴席に入場
致します。皆様、拍手で
新郎新婦様を、お色直しへ
と送り出し下さいませ。』
『パチパチパチパチパチパチ』
一旦新郎新婦様は退場ですわね。
さて披露宴は、
この和風ガーデンでのオープン
パーティーで、立食形式。
welcomeシャンパンが
先ほどまでウエイターや
ウエイトレスにサーブされて
ましたが、
豪華な華々が彩る円卓に
今度は前菜や料理が
素早く準備されてまいりますわ。
「しかしそれなら、着席のコース
料理なんじゃないのか。立食?
いろいろ面倒事にならないか」
まだ隣にいらっしゃいましたか。
「・・・・・」
他の女性スタッフには
長身で、
人気がある御尊顔かも
しれませんが、
わたくし全く興味ございません。
ので!
察しの悪い殿方には
残念な視線を投げるばかり。
「今回は、新婦様側の元会社より
男女とも同僚様のご出席となり
ましたから、着席スタイルでは
男女別分けやテーブル分けの
問題がございました。立食が
1番ナチュラルスタイルだと」
そう、
本来ならば新郎友人は男性を。
新婦様友人は女性を招待するのが
セオリー。
けれども、今回はたっての希望で
仕事場の同僚を招待客に
リストされた為、
わたくしが考えた結果、
立食スタイル、いわゆる
ビュッフェパーティーで
オープンな披露宴にと
提案したのですわ。
それに、
「着席スタイルでしたら、
何かございました時には、
かえって目立つではございま
せんか。例え心配なくとも、
人が行き来している方が、
スクリーンにもなるのです。」
わたくしは、
最良の場合と、最悪の場合を
常に想定しております。
ですから、課長も
しっかりして頂きたいものです。
「しかし、元彼なんだろ?同僚の
中にいるのは。心配だよ。だって
別れてそんなに立ってないのに、
フラれた元カノの結婚式だよ?
しかも、相手は旅館を継ぐ御曹司
だって聞いたら、たまらんぞ。」
「やめて下さい。課長。すぐ
そこにナカヤマ様がいらっしゃ
いますので、お静かに!」
わたくしが、
課長を嗜めますと、
わざとらしくも、慌てて手で
口を塞ぐ真似などなさる。
「やべ。アイツ?」
だーかーらー。
聞こえると言ってますの!
わたくしは、
目で課長に合図いたします。
わたくしどもの
ウェディング・セレネでは
しっかりと受付カウンターでの
ゲストチェックを行って
全スタッフに共有して
ございます。
ご友人はもちろん、
来賓に、親族様のリストは
徹底的に頭に入れます。
それでなければ
ウェディング・セレネの
コンシェルジュは
務まりません。
もちろん、新婦様からも
お写真を拝見してましたから、
わたくしは
穴が空く程にナカヤマ様の
お顔を存じてございますけど。
課長、わたくし
ナカヤマ様の写真、添付送信
してございますよね?
「出来る限り、 新婦様の近くには
わたくしが控えておきます。
課長も、いざという時は
助力、宜しくお願いします。」
わたくしは、
お気に入りの眼鏡を片手で
スッと整えまして
課長に念押しします。
「え!なに、そんな感じ案件?」
まだ両手で口を抑えて
課長は、目だけで
ナカヤマ様を追いかけます。
本日のナカヤマ様のお召し物。
わたくしの記憶が
正しければ、新婦様に拝借した
『初めてのデート写真』で
ナカヤマ様が着用していた
スーツに見えますのは、
課長には黙っていても
問題ございませんね。