「いや、そんなんじゃないんだ。優奈さんの愛情の深さと優しさを伝えたかっただけ」
拓ちゃんは笑って言うけど、お母さんには拓ちゃんの声が届かない。

「年だって拓哉より10歳も上なんでしょう。前に連れてきていた年下の子の方がよかったんじゃない?マヤだかメイだかって女の子」
「えーっ!優奈さん拓ちゃんより10下?ってことは、やだー私より年上じゃーん」
初めて勝ち誇った顔で兄嫁がそう言った。

「お母さんやめなさい」
「もうご飯出したら?」
うろたえながらお父さんとお兄さんがそう言ってくれるけど、お母さんと兄嫁は止まらない。

「家でできる仕事なんでしょう。今から帰ってらっしゃい」
拓ちゃんを説得するお母さんと
「私より年上でも、私は長男の嫁だから『お義姉さん』って呼んでね」
上から目線の兄嫁。
拓ちゃんは前の彼女の名前を出されてちょっと焦ったように、私を見て苦笑いする。私は無表情で兄嫁の話を聞いている振りをしてその顔を見つめていた。
このキャラは何かに使えないだろうか。
新しいCMに使えないだろうか。でもコンセプトに合わない。我が社の製品は高級感に溢れているから使えないか、強烈キャラだから惜しい。

しかし……こんな時でも仕事のネタを探す自分にあきれてしまう。
仕事に走りたいくらいの別世界だから仕方ないか。