放課後を迎え、いつもの河川敷に行こうして、スマートフォンから初めて電話がなった。知らない番号だった。恐る恐る電話に出ると聞き覚えのある声だった。
『もしもし、わしじゃ』
携帯番号は手話を教わるために、メモ用紙に僕の電話番号を書いて渡して置いたのだ。
「あ、その声は節子先生?」
『そうじゃよ。お前さん今日暇か?』
「あ、はい。暇ですけど」
『じゃあ、約束通り手話を教えたるから、わしの家に来な』
そう言って電話が切れてしまった。不意に麗音が家にいないか心配になった。出来れば麗音には内緒にしたい。