『また、麗音のピアノと歌が聞きたい』か……。僕も聞かせてあげたい、そう思った。僕が入り込んでいいことじゃないかもしれないけど、とにかく何とかしてあげたかった。
「あの、麗音のお父さんは今どこに住んでるんですか?」
節子先生少し目を見開いてから質問返ししてきた。
「お前さんが知ってどうするんだい?」
確かにそうだ。僕が知ってどうする。会いに行ける距離にいたとしても、僕が行って何が出来るだろうか。考えても仕方がない。
「……いえ、なんとなく知りたいだけです」
そう答えると、節子先生はため息をついてからペン立てからペンを取り、近くにあったメモ用紙にスラスラと文字を書き始めて、書き終わるとその紙を折りたたんで僕にスっと渡してきた。開くと住所が書かれていた。