それにしても、音は確かに鳴ってはいないが音が聞こえて来そうなほどなめらかに演奏していた。僕は声をかけようか少しだけ悩んだが、おばあちゃんを待たせる訳にも行かないので、静かに麗音に近づいて肩を優しく叩いた。すると麗音はビクッと驚いてゆっくりとこちらへ顔を向けて来たが、顔を真っ赤にしていた。恥ずかしがっているのだろうか。僕はその顔を見て素直に可愛いと思ってしまった。
僕はとりあえず、下を指してゆっくりと、
「おばあちゃんが呼んでるよ」
と口パクで言った。すると麗音は頷いて、鍵盤を閉じてから僕と一緒に階段を降り、1階へ向かった。
「麗音のやつ。ピアノ弾いてたじゃろ」