音のないこの世界で

僕は目を大きく開けた。驚いてることを全力で母に伝えた。
「何驚いてるのよ、いいから早く入っておいで」
伝わったらしくきちんと突っ込んでくれた。
僕は言われるがまま、お風呂場に行って体を洗い、風呂に入った。
数分してから風呂を出た。そのまま髪を乾かしてからリビングに行くと、
「じゃじゃーん!」
そう言って、母が自慢するようにテーブルに並べたのは、いつも僕が作るものより豪華だった。特に特別な日という訳では無いとは思うけど、
「なんで、こんなに豪華なの?」
席について箸を持ち「いただきます」を言う直前に聞いた。
「忘れちゃったの?今日は湊の誕生日なのよ?」
僕はそれを聞いてすぐに、
「……ご馳走様」
食材に一口も手をつけずにそう言ってすぐに立ち上がり、母が呼び止める声を無視して自室に入った。
なんで、僕の誕生日を祝おうとするのか、僕には理解できなかった。というか、祝って欲しくなかった。