中学生の頃はこれといって趣味がなかったけど、音楽を聴くのだけは好きだった。でも、売った。全部。
「じゃあ、欲しいものが出来たら言ってね」
「…うん。出来たら言うね」
できてるけど言う気はさらさらなかった。というか言えるわけなかった。
「ごちそうさま、お風呂先はいるねー」
珍しく母は片付けを僕に丸投げしてきた。いや、いつもの事だ。ただ、茶番がないだけ。
「あ、うん」
まだ食べて終わっていなかった僕は、寺の人みたいに静かな部屋で黙々とご飯を食べる。
何故か、味がしなかった。