どうすればこの人に麗音の演奏をきかせることが出来るだろうか。今まで使ってこなかったこの頭をフル回転させるとあるひとつの答えが出た。
「そのチケット。2枚あるのは僕が1枚間違えて送ってしまったものです。そして、もう1枚は麗音自身があなたへ向けて送ったものです。麗音はあなたに歌とピアノを聞いて欲しいと思ってるんですよ。そのチケットがあることが何よりも証拠じゃないですか。」
下を向いていた顔がハッと上を向いた。
「私は行ってもいいのかな……」
その質問が彼の自問自答だったとしても僕ははっきり答えた。
「当たり前です!それに、麗音はあなたに演奏聞かせたくてこの二ヶ月間毎日友人の部屋のピアノを借りてピアノと向き合って練習してたんですよ。雨の日も風の日も台風の日でも。どんな日でも」
母親への復讐のためとはあえて言わなかった。というか言えるわけなかった。
「……君がそこまで言うなら…こっそり行って見ようかな……」
声に出さなかったが麗音に「麗音。やったぞ」とテレパシーを送った。もちろん伝わるはずがないけど。