そう言って麗音は鍵盤に手を置き深呼吸を1回してから音を奏でた。麗音はこの音のない世界でピアノを弾いている。それは元々ピアノをやっていたとはいえ誇らしいことだ。前に麗音は『太陽みたいに輝いてみたい』と言っていた。僕からすれば既に輝いている、眩しい程に。
サビの部分はきちんと歌えていた。相変わらず綺麗な声をしていた。それを聞いていた茜は泣きそうになっていた。僕も少しだけ泣きそうになった。でも、僕らに聞かせることが最終目標じゃない。
「すごい!!私、途中で泣きそうになっちゃったよー!」
演奏が終わると茜が麗音に飛びつきながらそう言った。僕も全く同じ感想だった。
「文化祭ってチケット制だったよね?」
麗音の演奏が終わり、みんなで河川敷に座っている時に茜にそう聞いた。