家に帰ると、当たり前だがなんの音もなっておらず静かな空間だった。やっぱり1人は寂しい。改めて思い知らされた。気づくべきだった。母のお酒を飲む量が増えていたこととか。疲れてる証拠じゃないか。
ベッドに寝転ぶと不意に今日あの男の人から貰った名刺を財布から取り出して少し眺めた。
「世界各国からピアニストが集まるんだから。そりゃ出版社位いるよな……」
独り言のように呟いても仕方がない。とりあえず今は母のことと麗音の文化祭のことを考えるべきだ。自分の高校の文化祭は麗音の文化祭のもう少し後なので気にする必要はあまりなかったし、元々やる気はあんまりない。