聞こえなかったのかな。そう思い、もう一度別の言葉で話しかけてみる。今度はきちんと彼女の方を向いてから、
「ねぇ、いつからここに来るの？」
今度は普通に話しかけた。
そしたら彼女は、僕が隣にいることを今初めて知ったみたいな顔をしてから、両手を合わせてから口パクで「ごめんなさい」と言った。
無視をしたことに関して謝ったのだろうか、そう思ったけど違った。
彼女はカバンからノートとペンを取り出して何かを書いてそっと僕にノートを渡してきた。
『すみません。私、耳が聞こえないんです。もう一度言って貰えませんか？』
ノートにはそう書いてあった。
じゃあ昨日、リズムに乗っていたのはどういうことなのだろうか。でも、そんなことを聞く勇気、僕にはない。