智と二人で顔を合わせてまだにやにやしていた。
「……そんなことねーし」
今の僕に言えることはそれだけだった。
麗音は「ありが…とう」と言ってくれた。
僕は首を横に振ってから「大したことしてないよ」と手話で言った。
「にしても、あの時の湊まじかっこよかったなー」
帰りの駅に向かっていると智がからかうようにそう言ってきた。
「いや、本当にかっこよかったよ。」
今度は茜が智の横から顔を覗かせながらそう言った。
その後に麗音に手話で「湊、かっこよかったよねー」と話しかけてそれに対して麗音は深く頷いて笑った。
帰りの電車では今日聞いたピアノの話をした。電車の中ということもあり手話は使えなかったからみんなで紙に書いて感想を言い合った。