「……似ている?奥さんがそうなんですか?」
そう聞いてからストレートに聞きすぎたと思った。
「ああ、つい最近ね。突発性難聴だってさ。」
「……そうだったんですか。なんか、すみません…」
「どうして君が謝るんだい。とりあえず、お互い愛の力で頑張ろうか」
「あ、はい…だから、違いますから!」
随分とフレンドリーな人だったが、授業が始まると真剣に手話を学んでいた。
しばらくして、僕は家に帰る時間になったので、少し空気を読んでタイミングを見計らって、
「あの…帰る時間なので、お先に失礼します。」
そう言って席から立ち上がると隣の席にいたフレンドリーな男性が声をかけてきた。
「もう帰るのかい?それじゃあ気をつけて帰るんだよ」
この街の人間はみんな優しい。そう思った。
「はい!」
僕は元気よく返事をした。それから節子先生にも挨拶をして部屋を後にした。