僕はとりあえず母に『今から帰る』と連絡を入れた。
それから調べてくれた電車に乗って帰ることにした。
「いやー、にしてもピアノってあそこまですごいんだな。俺、知らなかったわー」
電車に乗って早々に智が再び感想を述べた。
「うん。そうだな」
「にしても湊がピアノね……。」
智には麗音の話はしてない。これからもするつもりもない。僕がピアノに関心があるのが不思議だったのだろう。
「……少しだけね」
「あ、そうか。あの友達の影響?」
「何の話?」
そう言ってから思い出した。麗音のピアノの練習場所を確保してもらったことを忘れていた。
「あれだよ。兄貴の部屋で練習したいって頼んできただろ?」
「あ、そうだったな」