僕はそのポスターを指を指しながらそう言った。
「え?音楽祭?こんなの行きたいの?」
そう。僕が見たいと思ったものは音楽祭だ。プロによる音楽祭。音楽祭と言ってもピアニストによる演奏会だ。それをどうしても見ておきたかった。プロの歌やピアノを聞いておかないと麗音に教えることはできないし、麗音と一緒に練習することもできない。というのは建前で、僕も一度本場の『音楽』というものを聞いてみたかった。
「うん、見てみたい。それと、こんなのとか言うなよ」
「わりーわりー。それで、湊が行きたいって言うならいいけどよ。これ夕方の6時からだぜ?平気なのか?」