「ああ、やってるけど…ってお前随分と俺の家族について詳しいな。もしかしてファンか?」
やっぱり…。この前、智が熱出た時に家に行ったら外からでもわかる位置にピアノが置いてあったのだ。
とりあえず、智の質問には答えずに、自分の話を続けた。
「部屋って防音か?」
「あ、うん。兄の部屋だけだけど。だけど兄貴、今留学行っててその部屋使ってないけどな」
留学…。なんて運のいい。僕にとって都合がよすぎる。
「その部屋、少しだけ貸してくれないか」
「は?何に使うんだよ」
そうなるのも当然だ。だから、こいつには少しだけ話すことにした。