冬休み明けということもあり学校に行くのは久しぶりだけど、クラスメイトは茉弥も含めてそんなに変わっていない様子であった。
また学校が始まるのかと思うと少し気の毒だ。少しの時間が経つとに担任が入ってきて、だらだらと話を始めたが何やら転入生が1人、僕たちのクラスに入るらしい。
(転入生か。……アニメとかで良くあるのは、この転入生がひと月前に僕が見た謎の少女で……という話の流れだよな。まぁ、それはないかー。アニメの見過ぎだなこりゃ)
担任の話が終わると、始業式の前にその転入生の紹介をするとのことでその子が教室に入ってきた。背丈はとても小さく高校生とは思えない程、髪は肩くらいまであって少しパーマのかかった綺麗な金髪。みんなの視線の中その少女は自己紹介を始めていた。
(ほらやっぱり。そんなに上手くいく話は現実ではないよなー。髪色も長さも違うし、身長は……似たり寄ったりだけどあの子は高校生には見えなかったし)
透き通った可愛らしい声で、淡々とでも何処か可愛げに話を進めている。
彼女の名は「御園サリナ」と言った。小さい頃から海外にいたが、親の転勤でこっちに越してきたらしい。
それにしては日本語が上手だったので感心した。自己紹介が終わると空いている席に座り、また担任の話に戻る。周りの男子がヒソヒソと話しているが多分御園さんの件についてだろう。
今日は午前授業だったから学校もいつもより早く終わる。その間には特に御園さんと話すことはなかった。転入してきた初日に話す理由もなかったからだ。
***
「……あ、あの! 職員室って何処にありますか?」
帰りのホームルーム後に、教室から出ようとした時、後ろを振り向くと御園さんが立っていた。急に話しかけられその上可愛いときたら、ちょっと焦っている僕がいた。
「あ! 今日からうちの学校に来た御園さんですよね? 職員室ですか? よかったら案内しますよ」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
頭を深く下げ顔を上げると笑顔で礼を言われた。礼儀もしっかりしていて非の打ち所がないとはこういうことかと思う。
職員室までの間、いかにも業務的な会話が始まる。
「僕、弓削響っていいます。これからよろしくお願いします。といっても、あと2ヶ月くらいでクラス替えになってしまいますが……」
「ご親切にありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします。例えあと2ヶ月で違うクラスになってしまうかもですが、いきなり転入してきた私に親切にしていただいて……話しかけたのが弓削さんで良かったです」
……そんな2人の挨拶の後、廊下でいろいろな会話をしたが全てがぎこちない。会話が途絶えると、何か話をしなくちゃという気持ちになる。そんな中、職員室は目の前になっていた。
「御園さん。あの、もし、また何かわからないことあったら遠慮なく頼ってください!」
不慣れな会話ばかりだったけれど、これで会話が終わるのが嫌だった。今日初めて会ったのに、もっと御園さんと話がしたい、そう思った。
「弓削くん……ありがとうございます。こっちにはお友達がまだいなくて、心細かったんです。あの、良かったらお友達になってくれませんか?」
「え! ……ぼ、僕で良ければ是非!」
純粋に嬉しかった。まだ出会ったばかりだけれど、2人だけの秘密を約束したみたいに勝手舞い上がり喜んでいる自分がいた。それから別れを告げて彼女は職員室に入って行き、僕は家に帰った。
帰りの電車に乗ったのは、いつもよりも遅い時間だった。これから新学期が始まる、当たり前だけど今までとは何も変わらない日々だろう。――変わったとすれば、転入生が来たくらいだ。
(本当に彼女はあの少女ではないのだろうか……)
家に帰ってもこれを呪文かのように唱えていた。そんなに考えることでもないのかもしれないけれど、そんなのは自分の自由だ。……ふと気づくと時計は0時を回ろうとしている。
「明日も御園さんと話せますように!」
何かを祈願するように両手を合わせてから眠りついた。
――その時から既に始まっていたのはまだ誰も知らない。デジタル時計が[23:59:58]から[00:00:00]に切り替わっていた――
また学校が始まるのかと思うと少し気の毒だ。少しの時間が経つとに担任が入ってきて、だらだらと話を始めたが何やら転入生が1人、僕たちのクラスに入るらしい。
(転入生か。……アニメとかで良くあるのは、この転入生がひと月前に僕が見た謎の少女で……という話の流れだよな。まぁ、それはないかー。アニメの見過ぎだなこりゃ)
担任の話が終わると、始業式の前にその転入生の紹介をするとのことでその子が教室に入ってきた。背丈はとても小さく高校生とは思えない程、髪は肩くらいまであって少しパーマのかかった綺麗な金髪。みんなの視線の中その少女は自己紹介を始めていた。
(ほらやっぱり。そんなに上手くいく話は現実ではないよなー。髪色も長さも違うし、身長は……似たり寄ったりだけどあの子は高校生には見えなかったし)
透き通った可愛らしい声で、淡々とでも何処か可愛げに話を進めている。
彼女の名は「御園サリナ」と言った。小さい頃から海外にいたが、親の転勤でこっちに越してきたらしい。
それにしては日本語が上手だったので感心した。自己紹介が終わると空いている席に座り、また担任の話に戻る。周りの男子がヒソヒソと話しているが多分御園さんの件についてだろう。
今日は午前授業だったから学校もいつもより早く終わる。その間には特に御園さんと話すことはなかった。転入してきた初日に話す理由もなかったからだ。
***
「……あ、あの! 職員室って何処にありますか?」
帰りのホームルーム後に、教室から出ようとした時、後ろを振り向くと御園さんが立っていた。急に話しかけられその上可愛いときたら、ちょっと焦っている僕がいた。
「あ! 今日からうちの学校に来た御園さんですよね? 職員室ですか? よかったら案内しますよ」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
頭を深く下げ顔を上げると笑顔で礼を言われた。礼儀もしっかりしていて非の打ち所がないとはこういうことかと思う。
職員室までの間、いかにも業務的な会話が始まる。
「僕、弓削響っていいます。これからよろしくお願いします。といっても、あと2ヶ月くらいでクラス替えになってしまいますが……」
「ご親切にありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします。例えあと2ヶ月で違うクラスになってしまうかもですが、いきなり転入してきた私に親切にしていただいて……話しかけたのが弓削さんで良かったです」
……そんな2人の挨拶の後、廊下でいろいろな会話をしたが全てがぎこちない。会話が途絶えると、何か話をしなくちゃという気持ちになる。そんな中、職員室は目の前になっていた。
「御園さん。あの、もし、また何かわからないことあったら遠慮なく頼ってください!」
不慣れな会話ばかりだったけれど、これで会話が終わるのが嫌だった。今日初めて会ったのに、もっと御園さんと話がしたい、そう思った。
「弓削くん……ありがとうございます。こっちにはお友達がまだいなくて、心細かったんです。あの、良かったらお友達になってくれませんか?」
「え! ……ぼ、僕で良ければ是非!」
純粋に嬉しかった。まだ出会ったばかりだけれど、2人だけの秘密を約束したみたいに勝手舞い上がり喜んでいる自分がいた。それから別れを告げて彼女は職員室に入って行き、僕は家に帰った。
帰りの電車に乗ったのは、いつもよりも遅い時間だった。これから新学期が始まる、当たり前だけど今までとは何も変わらない日々だろう。――変わったとすれば、転入生が来たくらいだ。
(本当に彼女はあの少女ではないのだろうか……)
家に帰ってもこれを呪文かのように唱えていた。そんなに考えることでもないのかもしれないけれど、そんなのは自分の自由だ。……ふと気づくと時計は0時を回ろうとしている。
「明日も御園さんと話せますように!」
何かを祈願するように両手を合わせてから眠りついた。
――その時から既に始まっていたのはまだ誰も知らない。デジタル時計が[23:59:58]から[00:00:00]に切り替わっていた――