2人の時間を過ごした後は、最後になるであろう学校の準備をするためにそれぞれの家に帰った。最後にクラスのみんなに会いたい気持ちもあったから、学校には行きたかった。もちろん、学校で御園さんにも会いたかった。
 昨日だけで、7時間もの時間が一気になくなった。それを考えると、この世界があるのも長くてあと2日ばかりだろう。
 学校に着くと、茉弥と要がいた。2人とも不安そうな顔をしているけれど、そうなるのも当然だった。僕は出来るだけ不安を和らげる様な会話を持ちかけて、御園さんが学校に来るのを3人で待つことにした。

「御園さん遅いね……。ゆげっち何か知らないの?」
「うん。昨日も長い時間会ってたんだけど、特に変わった様子はなかったはず……どうしたんだろう」
 朝のホームルーム間近になっても彼女の姿がない。

【チャイムの音】

 いつもはこれと同時に、教室へ入ってくる担任の姿もない。僕も茉弥も要も、あたりを見回していた時、担任が教室へ駆け込んできた。

「遅れてすまん。御園は、欠席だ。……理由は、わからない」

 この一言が辺りを騒つかせた。

「先生! 理由がわからないってどういうことですか!」
「……そのままの意味だ。 今、御園本人から電話が来てな……。 今日は学校に行けないとのことだった」

「……エリアさん!」

「……ゆげっち!」
 僕は先生の言葉を聞いた瞬間に教室を飛び出した。もう一度、彼女の声が聞きたい、最後は彼女と一緒に居たい、そんな気持ちが僕を走らせた。

「……もしもし! エリアさん! いまどこに居ますか?」
「……弓削くんか。私も、君に会いたい。 あの海岸線にしよう」
「わかりました! すぐ向かいます!」
 エリアさんは驚くほど冷静なトーンで話していた。御園さんが学校に来ていない理由を知っていたのだろうか。でないと、あんなに冷静なはずがない。そんなことを考えながら、海岸線に走った。


「……おはよう、弓削くん」
「サリナさんは! 何処に行ったんですか! 居場所、分かってるんですよね? 教えてください」


「…………」


「……何かあったんですか」

「……これ、君に渡してほしいって」

「これは」



御園さんからの手紙だった。