「お願いだから待ってくれ！もう少しだけ、君と話がしたい……です」
つい敬語になってしまった。
「芽依はなんであんたなんかと……私は、ずっと前から何考えてるか分からないあんたが大嫌いだった」
それは知らなかった。芽依と関わるようになってから嫌われたのかと思ってた。
でも、僕が色んな人から嫌われてることは自分が一番わかってることだ。その僕のことが嫌いな人の中に彼女が入っていてもおかしくない。
「それはわかってる。でも、ちゃんと僕のこと知って欲しいんだ。それから…君が良ければだけど………僕と友達になって欲しい」
公園の中で遊ぶ子供たちのはしゃぐ声が聞こえなくなった。長い沈黙の後、彼女が先に口を開いた。
「いつまで掴んでんのよ」
僕は咄嗟に手を離した。
「ごめん……」
「それと君…じゃない。私の名前……朱里だから」
それだけ言って彼女は公園を去っていった。
でも、僕は追いかけはしなかった。
だって名前で呼びあうことは友達の証みたいなものだって、芽依が教えてくれたから。