そのあと、夕食と洗い物を済ませて部屋に戻った僕は、スクールバッグのファスナーを開いて、遥奏に渡された緑色のクリアファイルを取り出した。
今は急ぎの提出物もないし、今日でできそうなら終わらせちゃおう。
クリアファイルの中から、去年のチラシを取り出して見てみた。
一番上に、左詰で白抜きの大きな文字。
『男子バスケ部』
無意識にイメージしていたものと違った文字列を目にして、得体の知れない不快感が胸のあたりに生まれた。
受け取った時ちゃんと見てなかったけど、女子じゃなくて男子バスケ部なのか。
「仲良し」ってだけ聞いて、勝手に女子だと思ってた。
まあ、遥奏なら「仲良し」の男友達がいても不思議ではない……けど。
もしかすると、「仲良し」というぼんやりとした表現の中に、何か重要な情報が隠されているのかもしれない。
嫌になるほど鮮明な情景が、頭の中に素早く描かれた。
光沢のあるバスパンを履いた背の高い男子生徒が、遥奏からチラシを受け取って顔を輝かせる。
両手をグーにして、その顔を見上げる遥奏。
心なしか、呼吸が乱れてきた。
僕、もしかして都合よく利用されてるのかも。
根拠のない妄想を膨らませた自分自身に腹が立って、頭の中の画用紙を小さく折りたたんだ。
事情がなんであれ、遥奏は僕の力を必要としているんだ。
余計なことは考えず、期待に応えられるように頑張ろう。
あらためて、去年のチラシを観察する。
レイアウトは横長。左上に大きく部活名。その横に、バスケットボールのイラストが描いてある。
真ん中に、黒い枠で囲われた部活の詳細説明。余白にダイヤや星が散りばめられている。
きれいに整えられていて、悪くはないデザインだ。
でも、あと一歩インパクトのあるチラシに仕上げる余地もあると感じた。
もっと、新入生の目に止まるようにするには。
僕は、手元のスマートフォンでバスケットボール選手の画像を検索し、手頃な素材を見つけて拡大した。
ダンクシュートを決める男子選手の構図をとらえ、鉛筆で輪郭を描く。
力強い跳躍を表現しながら、僕はこの前の体育のバスケで自分が何回ボールに触れたかを数えていた。
今は急ぎの提出物もないし、今日でできそうなら終わらせちゃおう。
クリアファイルの中から、去年のチラシを取り出して見てみた。
一番上に、左詰で白抜きの大きな文字。
『男子バスケ部』
無意識にイメージしていたものと違った文字列を目にして、得体の知れない不快感が胸のあたりに生まれた。
受け取った時ちゃんと見てなかったけど、女子じゃなくて男子バスケ部なのか。
「仲良し」ってだけ聞いて、勝手に女子だと思ってた。
まあ、遥奏なら「仲良し」の男友達がいても不思議ではない……けど。
もしかすると、「仲良し」というぼんやりとした表現の中に、何か重要な情報が隠されているのかもしれない。
嫌になるほど鮮明な情景が、頭の中に素早く描かれた。
光沢のあるバスパンを履いた背の高い男子生徒が、遥奏からチラシを受け取って顔を輝かせる。
両手をグーにして、その顔を見上げる遥奏。
心なしか、呼吸が乱れてきた。
僕、もしかして都合よく利用されてるのかも。
根拠のない妄想を膨らませた自分自身に腹が立って、頭の中の画用紙を小さく折りたたんだ。
事情がなんであれ、遥奏は僕の力を必要としているんだ。
余計なことは考えず、期待に応えられるように頑張ろう。
あらためて、去年のチラシを観察する。
レイアウトは横長。左上に大きく部活名。その横に、バスケットボールのイラストが描いてある。
真ん中に、黒い枠で囲われた部活の詳細説明。余白にダイヤや星が散りばめられている。
きれいに整えられていて、悪くはないデザインだ。
でも、あと一歩インパクトのあるチラシに仕上げる余地もあると感じた。
もっと、新入生の目に止まるようにするには。
僕は、手元のスマートフォンでバスケットボール選手の画像を検索し、手頃な素材を見つけて拡大した。
ダンクシュートを決める男子選手の構図をとらえ、鉛筆で輪郭を描く。
力強い跳躍を表現しながら、僕はこの前の体育のバスケで自分が何回ボールに触れたかを数えていた。