その間に佐野さんは船瀬くんのカーディガンとワイシャツを容赦なく開けた。雑に巻かれた包帯の下は、見るに堪えないほど赤く腫れており、叩きつけられた衝撃で傷が開いて出血していた。素人でも分かるほど、治療を受けていないことは明白だった。

「これ絶対病院行ってないでしょ! 腕だけじゃないし、お腹も痣だらけ……あと痛いところは? 自己流で手当てするなんてありえない、やるならちゃんとやりなさいよ!」

 傘泥棒のときよりも怒った様子で、佐野さんは持っていたハンカチを傷口に当てる。船瀬くんが何か言おうとする度に「はぁ?」と睨まれるので、すっかり萎縮してしまった。

「この間、私言ったでしょ。『できるだけ助ける』って。さっきは逆に助けられちゃったけど」
「……助けたわけじゃないです。結局先輩たちを騙して、いろんな人に迷惑をかけて、罪悪感でいっぱいだったんです。僕なんか……」
「そうやって自分を下げないで」

 塞ぎ込んだ船瀬くんの左肩を掴んで顔を向けさせると、佐野さんは彼の目を見据えた。

「罪悪感とか迷惑とかよくわからないけど、誰もが怖くて見てるだけだった状況で、真っ先に助けようとしてくれたのは淳太だけだった。逃げてもよかった場面で庇うことを実行したアンタは、この学校で一番格好良くて強いよ。私はまた、淳太に助けられちゃった」
「また……?」
「アンタのスマホ、カバーに星のシールが貼ってあったでしょ。自分の目印にしてるのかな。中庭で散らかした荷物にも貼ってたね。……私がいつも持ち歩いているビニール傘にも、同じ星のシールが貼ってあるの」
「……あっ!」

 驚いて涙が止まった彼の頬にそっと手を添えて、佐野さんは笑った。

「お願いだから、僕なんかって決めつけないでよ。私が寂しいからさ」