「どういうことですか！　話が違いますよね!?」
「うるせぇな。そんな大声出して見つかったら、お前も俺たちも終わりだぞ？」

　物陰に隠れて様子を伺うと、船瀬くんの他に二人、南雲第一の制服を着た男子生徒の姿があった。
　校門は警備員が常に監視しているが、道路と隣接している校舎の裏は穴だったらしい。最近の南雲の治安は悪化しているように思えるけど、北峰のセキュリティこそ問題があるのではと呆れてしまう。

「お前もメッセ―ジを見ただろ。これは岸谷が考えた仲間へのドッキリだって。自分の先輩を信じられないのか？」
「三日間も連絡がつかないって、明らかにおかしいじゃないですか……」
「ドッキリなんだからリアルにやってなんぼだろ？　……ってことで船瀬クン、分かってるよな？」
「……え？」
「なに間抜けな顔してんの？　この件を誰かに漏らしたら、お前がコンビニで万引きしていたこと、学校にバラすからな」
「ああ、それいいねぇ！　俺たちも黙ってるからさぁ？」
「もう勘弁してください……っ、それに万引きしたのは僕じゃ――」
「嘘でも広まれば本物になるんだよ。つか、お前を信じてくれる奴がいるの？　いないだろ？」

　ゲラゲラと笑う彼らに、怒りで震える手を強く握る。
　嘘か誠かも分からない、たった一つの噂のせいで自分の周りにいる人々に怖がられ、冷たい目で距離を置かれる。――いくら否定しても信じてもらえない、大切にしたいと思った人さえ離れていくその現実を受け止め、耐えながらも平然を装うことがどれほど辛く苦しいことか！

「おら、さっさと出せよ！」
「いっ……がはっ！」

　南雲の生徒の一人が船瀬くんの怪我をしている右腕を掴んで、勢いよく校舎の壁に叩きつける。その衝撃で背中を強く打ちつけ、胸あたりを抑えて苦しそうに倒れ込んだ。起き上がれるほどの気力もないようだ。
　これ以上は見るに堪えかねない。私は物陰から飛び出した。

「止め――」
　
　止めて、と叫んだその瞬間、私の横を何かが颯爽と通り抜けていく。風――いや、金色に走る、閃光が、駆け抜けた。