その一方で、私はある不安を募らせていた。
 数日で済むと思っていた佐野さんと友人の絶交期間が、ついに一週間を過ぎようとしているのだ。
 これには友人たちも困惑しているようで、昼休みに彼女がこちらに来るのをハラハラを見守るようにして陰から覗いていることがあった。佐野さん曰く、クラスでの共有事項以外は全く話していないらしい。過去に二日ほど拗ねていたことがあった以来の快挙だと言うが、本人はあまり気にしていないように見えた。
 彼女に限って、友人を軽々しく見ているとは到底思えない。喧嘩の元凶である私が首を突っ込むのもどうかと思うが、それでも何とかして仲直りする方法を考えてしまう。余計なお節介かもしれないが、こんな些細なことで簡単に失っていいものじゃない。

『――ったく、相変わらず面倒な奴だな』
「い……っ!?」

 見かねた袴田くんがやれやれと言いたげに私の額を軽く弾く。

『誰だって自分の身可愛さに動いてんだよ。やりたいことやってんだからいいだろ。お前は他人のことを考えすぎ。そんな生き方してたら息苦しいだけだろ』
「……デコピンすることじゃないよね?」

 ヒリヒリと痛む額を抑えながら睨みつければ、袴田くんは「くはは」と楽しそうに先を歩いていく。
 彼の言うことも一理あるかもしれないが、一つだけ訂正する。私は自分のことしか考えていない。
 人間なんて、みんなそんなものでしょう?