「そう……なの? 井浦ちゃん、そんなにキッシーと関わりあったっけ?」
「い、イメージだから! ……わかんないけど」
「ほ、他には何かありませんか? 例えば弱みとか……」
弱み、と聞いてふと違和感を覚えた。気になる人物のことを他人から聞く場合、弱みや欠点といった部分を訪ねるだろうか。それが仲の良い間柄ならまだしも、船瀬くんと岸谷くんはおそらく対面したことがない。やはり岸谷くんの言う通り、南雲の生徒と繋がっている可能性がある。
もっと踏み込んで問い詰めたいところだが、逃げられてしまうかもしれない。不良同士の喧嘩に関わりたくないけど、どうせ巻き込まれる羽目になるのであれば、未然に防げるものは防ぐべきだ。
しかし、そう思っている人間が北峰の生徒だけで何人いるだろうか。結局不良と呼ばれる生徒だけが勝手に喧嘩しに出ていくだけで、周りの人間はそれを関係ないと言い張ってみて見ぬふりをしてしまう。誰も助けない。だから岸谷くんが先頭に立って率先して守ろうとしている。――袴田くんの代わりとして。
『……オイ井浦。気付いてんだろ』
袴田くんが口元を緩ませて笑いながらも、真剣な声色で言う。
ワイシャツとカーディガンでうまく誤魔化しているが、彼の肩幅が左右と比べて、右肩の方が分厚い。食事中も右腕をだらんと伸ばしている。おそらく包帯かサポーターを巻いているために上手く上がらないのだろう。昨日だって、船瀬くんが席までドリンクを運んできたときに手が震えていたのは緊張ではなく、腕にそれ以上力が入らなかったからだ。
もし何らかの喧嘩に巻き込まれて負った怪我なら、安藤くんの目撃証言となにか関係があるのかもしれない。
「……私ね、岸谷くんとはよく話すけど、あまり良いイメージは持ってないよ」
「へ? そうなんですか?」
「うん。汗臭い人苦手なの」
『ブッ!』
近くで袴田くんがまた耐え切れずに吹き出した笑い声が聞こえるが気にしない。申し訳なく思いながらこの場にいない岸谷くんを――汗臭いかは知らないが――罵倒すると、船瀬くんはまたキョトンとした顔をした。
「だからあまり聞きたくないんだけど……もしかして喧嘩に巻き込まれたりした?」
「い、イメージだから! ……わかんないけど」
「ほ、他には何かありませんか? 例えば弱みとか……」
弱み、と聞いてふと違和感を覚えた。気になる人物のことを他人から聞く場合、弱みや欠点といった部分を訪ねるだろうか。それが仲の良い間柄ならまだしも、船瀬くんと岸谷くんはおそらく対面したことがない。やはり岸谷くんの言う通り、南雲の生徒と繋がっている可能性がある。
もっと踏み込んで問い詰めたいところだが、逃げられてしまうかもしれない。不良同士の喧嘩に関わりたくないけど、どうせ巻き込まれる羽目になるのであれば、未然に防げるものは防ぐべきだ。
しかし、そう思っている人間が北峰の生徒だけで何人いるだろうか。結局不良と呼ばれる生徒だけが勝手に喧嘩しに出ていくだけで、周りの人間はそれを関係ないと言い張ってみて見ぬふりをしてしまう。誰も助けない。だから岸谷くんが先頭に立って率先して守ろうとしている。――袴田くんの代わりとして。
『……オイ井浦。気付いてんだろ』
袴田くんが口元を緩ませて笑いながらも、真剣な声色で言う。
ワイシャツとカーディガンでうまく誤魔化しているが、彼の肩幅が左右と比べて、右肩の方が分厚い。食事中も右腕をだらんと伸ばしている。おそらく包帯かサポーターを巻いているために上手く上がらないのだろう。昨日だって、船瀬くんが席までドリンクを運んできたときに手が震えていたのは緊張ではなく、腕にそれ以上力が入らなかったからだ。
もし何らかの喧嘩に巻き込まれて負った怪我なら、安藤くんの目撃証言となにか関係があるのかもしれない。
「……私ね、岸谷くんとはよく話すけど、あまり良いイメージは持ってないよ」
「へ? そうなんですか?」
「うん。汗臭い人苦手なの」
『ブッ!』
近くで袴田くんがまた耐え切れずに吹き出した笑い声が聞こえるが気にしない。申し訳なく思いながらこの場にいない岸谷くんを――汗臭いかは知らないが――罵倒すると、船瀬くんはまたキョトンとした顔をした。
「だからあまり聞きたくないんだけど……もしかして喧嘩に巻き込まれたりした?」