「佐野さん、部活は?」
「バトミントン部に入ってたよ。三年になる前に受験勉強するからって辞めたけど」
「受験……やっぱり三年生まで部活をやるのは大変ですか?」
「人によるんじゃないかな。私は行きたい大学の平均に届いてないから、勉強に集中することにしたの。元々部活は友達に引っ張られただけで、秋の団身体戦でやり切ったからね。悔いはないよ」
佐野さんはそう言って清々しい笑顔を見せる。高卒で就職する生徒も少なくはないが、大半が大学や専門学校へ進学する。佐野さんもその一人らしい。
「船瀬くんは部活しないの?」
「僕は……バイト三昧です。そうでもしないと迷惑が……」
「え……?」
「いいえ、何でもないです! ……忘れてください」
最後になるにつれ船瀬くんは目を逸らし、声は小さくなっていった。それでもはっきりと「家族が危ない」と口にしていた気がする。それはまるで、誰かに脅されているようにも見受けられた。南雲の不良と何か関係があるのだろうか。
「ぼ、僕のことより先輩の話が聞きたいです!」
「私たちの? なんの話がいい?」
「えっと……じゃ、じゃあ、岸谷さんについて」
「むぐっ!?」
恥ずかしそうに身をよじりながら言った彼の言葉に、私は飲み込もうとしていたサンドイッチを喉に詰まらせそうになった。慌てて佐野さんがペットボトルのお茶を差し出してくれる。
「あの……井浦先輩、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫……まさか名指しでくるとは思ってなかったから、ちょっとびっくりした」
もらったお茶を飲み込んでから言うと、船瀬くんはすみません、と悲しそうな顔をした。
「お話したことはないんですけど、風紀委員として不良を取り締まっていると噂で聞いたので、どんな人なのかなと」
「んー……キッシーって私、そんなに話したことないけど、第一印象は自己中心って感じかな。井浦ちゃんは?」
「……学校一不憫な人?」
『くはっ!』
私の言葉にそれまで静かに聞いていた袴田くんが吹き出して笑った。
いやいや、彼が不憫に見えるのは、半分くらい袴田くんのせいだよ。
近くでツボに入っていることも知らずに、佐野さんと船瀬くんは呆気を取られた顔をしていた。イメージとかけ離れていたのか、拍子抜けしたらしい。
「バトミントン部に入ってたよ。三年になる前に受験勉強するからって辞めたけど」
「受験……やっぱり三年生まで部活をやるのは大変ですか?」
「人によるんじゃないかな。私は行きたい大学の平均に届いてないから、勉強に集中することにしたの。元々部活は友達に引っ張られただけで、秋の団身体戦でやり切ったからね。悔いはないよ」
佐野さんはそう言って清々しい笑顔を見せる。高卒で就職する生徒も少なくはないが、大半が大学や専門学校へ進学する。佐野さんもその一人らしい。
「船瀬くんは部活しないの?」
「僕は……バイト三昧です。そうでもしないと迷惑が……」
「え……?」
「いいえ、何でもないです! ……忘れてください」
最後になるにつれ船瀬くんは目を逸らし、声は小さくなっていった。それでもはっきりと「家族が危ない」と口にしていた気がする。それはまるで、誰かに脅されているようにも見受けられた。南雲の不良と何か関係があるのだろうか。
「ぼ、僕のことより先輩の話が聞きたいです!」
「私たちの? なんの話がいい?」
「えっと……じゃ、じゃあ、岸谷さんについて」
「むぐっ!?」
恥ずかしそうに身をよじりながら言った彼の言葉に、私は飲み込もうとしていたサンドイッチを喉に詰まらせそうになった。慌てて佐野さんがペットボトルのお茶を差し出してくれる。
「あの……井浦先輩、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫……まさか名指しでくるとは思ってなかったから、ちょっとびっくりした」
もらったお茶を飲み込んでから言うと、船瀬くんはすみません、と悲しそうな顔をした。
「お話したことはないんですけど、風紀委員として不良を取り締まっていると噂で聞いたので、どんな人なのかなと」
「んー……キッシーって私、そんなに話したことないけど、第一印象は自己中心って感じかな。井浦ちゃんは?」
「……学校一不憫な人?」
『くはっ!』
私の言葉にそれまで静かに聞いていた袴田くんが吹き出して笑った。
いやいや、彼が不憫に見えるのは、半分くらい袴田くんのせいだよ。
近くでツボに入っていることも知らずに、佐野さんと船瀬くんは呆気を取られた顔をしていた。イメージとかけ離れていたのか、拍子抜けしたらしい。