ちょうどそこへ、エプロン姿の店員がトレーにフラペチーノとラテを乗せて、不安定ながらも器用に運んできた。

「お待たせいたしました。キャラメルクランチラテをご注文のお客様は……」
「あ、はい」

 プルプルと両腕が震えている。これはトレーごと受け取った方がいいのではと顔を向けると、緊張した面持ちで店員はゆっくり腰を下げた。おそらく一度トレーを平らな場所へ置いて、片手で一つずつ置こうとしているのだろう。しかし、フラペチーノにチーズケーキが丸々一切れ刺さったパフェ状態のそれを片手でトレーからテーブルに移すには無理がある。すでに不安定でケーキが揺れているのを見て、私は彼を止めた。

「あの、トレーごと置いて貰った方が――」
「え? うわっ!」

 店員の彼が一瞬だけ気を緩めた途端、絶妙なバランスで立っていたフラペチーノのプラスチックカップがぐらりと揺れ、真横に倒れていく。せっかく多めに乗せてくれたホイップクリームも、チーズケーキと共に流れてしまう。思わず私も佐野さんも腕を伸ばしたが、どうしたって間に合わない。
 諦めたその時、不思議なことにカップは傾いた状態で宙に止まると、ゆっくりと傾いたのが元の位置に戻っていた。クリームやフラペチーノは若干カップに沿って零れ、アンバランスで刺さっていたチーズケーキは持ってきたときよりも深く刺さっている。なんとも不格好になってしまったが、大惨事は免れたようだ。