放課後になると、袴田くんは『岸谷のところに行ってくる』とだけ言って教室から出て行ってしまった。気にはなったが考えても仕方がない。今日は早く帰ろうと鞄に荷物を詰めていると、教室の出入り口が急に騒がしくなった。
顔を上げると、隣のクラスの佐野さんが入ってきたようで、誰かを探すように辺りを見渡している。交友関係の広い彼女だから、友達と一緒に帰るために呼びにでもきたのだろう。
……まぁ、私には関係ないけどね!
自虐に少し悲しくなりながら席を立ったところで、突然佐野さんが声を上げた。
「見ぃつけた! 井浦ちゃん、かーえろっ!」
「……え?」
よく通る彼女の声を聞いて、クラスメイトの何人かが私と彼女を見比べる。
かくいう私も幻聴かと疑うほど驚いており、肩にかけようとしていた鞄を落としそうになった。困惑しているうちに、いつの間にか佐野さんが目の前までやってくると、さも当然のように距離を詰めてくる。
「あれ、なんか用事ある? もしかして委員会の当番とか」
「え、いや……入ってないし用事もないけど」
「じゃあいいよね、一緒に帰ろ! この間のお礼がしたいし」
「でも別にあれは……」
「絶対逃げちゃダメって、私言ったもん。忘れちゃった?」
そういえば事前に釘を刺されてたっけ。
図星を突かれると同時に、彼女はちゃっかりと私の右腕と鞄の持ち手を握っている。逃がすつもりはないらしい。
「あ、あの……」
「由香ー? 早く帰ろーよ」
どう応えていいのかわからず困惑していると、教室の入り口で集まっている隣のクラスの女子生徒たちが彼女に声をかけてきた。
顔を上げると、隣のクラスの佐野さんが入ってきたようで、誰かを探すように辺りを見渡している。交友関係の広い彼女だから、友達と一緒に帰るために呼びにでもきたのだろう。
……まぁ、私には関係ないけどね!
自虐に少し悲しくなりながら席を立ったところで、突然佐野さんが声を上げた。
「見ぃつけた! 井浦ちゃん、かーえろっ!」
「……え?」
よく通る彼女の声を聞いて、クラスメイトの何人かが私と彼女を見比べる。
かくいう私も幻聴かと疑うほど驚いており、肩にかけようとしていた鞄を落としそうになった。困惑しているうちに、いつの間にか佐野さんが目の前までやってくると、さも当然のように距離を詰めてくる。
「あれ、なんか用事ある? もしかして委員会の当番とか」
「え、いや……入ってないし用事もないけど」
「じゃあいいよね、一緒に帰ろ! この間のお礼がしたいし」
「でも別にあれは……」
「絶対逃げちゃダメって、私言ったもん。忘れちゃった?」
そういえば事前に釘を刺されてたっけ。
図星を突かれると同時に、彼女はちゃっかりと私の右腕と鞄の持ち手を握っている。逃がすつもりはないらしい。
「あ、あの……」
「由香ー? 早く帰ろーよ」
どう応えていいのかわからず困惑していると、教室の入り口で集まっている隣のクラスの女子生徒たちが彼女に声をかけてきた。