袴田くんが亡くなって二ヵ月後の春。私は無事に進級し、三年生になった。
 屋上はフェンスの貼り換え工事が入ってしばらく立ち入り禁止とされていたが、新学期早々にまた解放された。今後は定期的にメンテナンスを実施するらしい。

『あー……良い天気だなぁ』

 屋上に来て早々、袴田くんは給水タンクの上に登って大きく伸びをした。
 どうやらその場所が気に入ったらしく、いつの間にかそこにいて、屋上から見える景色を独り占めしている。相変わらず金髪と黒の二連ピアスの目立つ容姿の彼に気づく人は、私以外誰もいない。

『そういや、最近岸谷の奴見てねぇな』
「ちゃんと授業受けてたよ」
『お? 真面目クンに戻ったか?』

 あの件以来、岸谷くんは変わった。不良の中でも学校に迷惑をかけないよう、少しでも内申点を上げようと頑張っている。以前と比べて表情が柔らかくなったとの声が上がり、先生たちは驚きを隠せずにいた。
 また、ファンクラブに関しては「岸谷本人と周りの人間に迷惑をかけなければ良し」と公言し、活動を制限させていった。それでもたまに睨まれるから何とかしてほしい。

『アイツは喧嘩に入ってくるような奴じゃねぇ。ちょっとした反抗期に、厄介なところまで足突っ込んじまっただけだ』
「もしかして、岸谷くんのことをずっと気にしてたの?」
『俺が? んなわけねぇじゃん。だって俺、人を最悪な終わり方に仕向けた奴なんだぜ?』