すると屋上の扉が大きな音を立てて開かれると、女子生徒が数人、校舎から出てきた。
先輩だろうか、彼女たちは半泣きの私を見つけると、なぜか嬉しそうに笑みを浮かべた。

「あーっ! いたいた!」
「どこ行ってたのー? 随分探したのよ」
「え? あ、あの……?」

 校則違反ギリギリのメイクをした彼女たちは、私の両腕を掴んで立たせると、引きずるようにして歩かせる。愛想笑いを浮かべる二人に抵抗も虚しく、一人の先輩の前に突き出された。

「急になんですか……!?」
「心当たりない? アンタ、岸谷と最近仲良いでしょ?」
「私たちね、誰が岸谷くんを奪うか賭けてたの。彼、不良だけどかっこいいでしょう? サッカー部でも有名だったし、退部した今でもファンクラブは残っているのよ」
「そしたらこの間、岸谷がアンタを抱きしめてるの見ちゃったんだよねー。他校の不良と喧嘩した後さ、覚えてない?」
「耳元で話すとか、ホント生意気! アンタみたいな子が岸谷くんとつり合うわけないの。さっさと別れてよ」

 黙って聞いていれば、彼女たちの口から次々と出てくるのは妬みの言葉ばかり。
 抱しめられた?
 耳元で話された?
 つり合わないから別れろ?

「…………」

 絶句。

「なによ、何か文句でもある?」
「……いや、ちょっと……くはは」

 自然に笑いが零れてしまう。両腕を掴んでいる二人には聞こえたようで、気味悪がって掴んでいる力が緩んだ。約一ヵ月、袴田くんが身体を乗っていたせいか、笑い方も口の悪さも染みついてしまったらしい。

「いやぁ……。勘違いも甚だしいなと」
「は?」
「わかんないの? だから岸谷くんに見向きもされないんだよ、バーカ」