「そうっすね。……でも俺は後悔してませんよ」
「え?」
「近江先輩や袴田、仲間と喧嘩した日々を、高校生活を棒に振ったとは一ミリも思ってませんから。俺の大切な青春っすよ」

 胸を張って堂々と宣言する岸谷くんに、近江先輩は意表を突かれてキョトンとしていた。そしてすぐにはにかんだ笑みを浮かべると、噛み締めるように頷く。

「なんか……青春って感じだよね!」
「そう……?」

 二人のやり取りを見てじんときたのか、両目が潤んでいる山中くんにすかさず船瀬くんがハンカチを手渡す。

「そんなに嬉しかったんですか?」
「ああ、うん。あの中に袴田も一緒にいるような気がしてさ。井浦さんもそう思わない?」
「……そうだね」

 二人にとっては、高校生活を語るうえで袴田くんの存在は無くてはならないもの。当の本人は安堵の笑みを浮かべて、少し離れた場所から見ていた。