「い、いいんですか?」
「もちろん。大晴だけじゃなくて、隼人たちにも世話になってるみたいだし。先輩がこれくらいしないと申し訳ないからさ。いつでもおいでよ」
「ありがとうございます。……でもどうして片方は肉団子なんですか?」
「ああー……それな、後輩(・・)がよく食ってたんだ。この間失くしたって言ってたから代わりに持ってきた。悪いけど、今度会ったら渡しといてくれないか? ここに、黒いピアスを二つつけているのが目印だから」

 近江先輩は私の横に目を向けると、自分の左耳を指す。
 これには袴田くんは驚いた顔で瞬きを繰り返していた。なんせおんど食堂の肉団子定食は、死んだ後も食べたいと嘆いていたほど、袴田くんが好きな定食だ。
 先輩には袴田くんの姿が見えているのだろうか。――思わず確かめたくなったが、あえて彼の名前を口にしなかったのだ。聞くのは野暮だろう。

「……わかりました、必ず渡します」

 受け取った食券をぎゅっと握る。近江先輩は満足そうに笑った。