ふと、後ろから呼ばれて振り返ると、やけに目立つオレンジパーカーを着た近江先輩と制服姿の山中くんが手を振りながらやってきた。すでに屋台を巡っていたのか、山中くんの手には可愛らしい綿菓子が握られていた。
「久しぶりー。元気ぃ?」
「元気……って、そんなに日が経ってないですよね?」
「ごめんね、井浦さん。事前に言っておけばよかったけど、連絡先知らなくて」
「う、ううん。びっくりしただけだから。来てくれてありがとう」
『げぇっ……』
ふいに嫌そうな声がして見ると、袴田くんが先程と打って変わってげっそりした顔をしている。近江先輩は直属の先輩ですごくお世話になったと聞いている。怪訝そうにしているのも照れ隠しだったりするのだろうか。
『……今、照れ隠しとか考えただろ。残念ながら本心だ』
鬱陶しいと面倒臭がっている一方で、口元が緩んで嬉しそうに見える。本人には言わないでおこう。
近江先輩は在学中は「最強の自由人」の異名を持つ不良だったと聞く。実際に会った時も怖いイメージはなかったけど、私が知らないだけで、二人しか知らない一面があるのかもしれない。
そういえば岸谷くんはスマホに表示された文面だけで震えあがっていたっけ。
「きょ、今日はどうしたんですか?」
「可愛い後輩の最後の文化祭を見に来たに決まってるだろー? あ、大晴は俺が連れてきた」
「ちょうど北峰のアニメ同好会に顔を出そうと思っていたんだ。少し前にネット上で意見交換会をしていて――」
「なにより、井浦チャンに会いたかったから来ちゃった」
ニッコリと満面の笑みを浮かべて近江先輩が言う。不用意に距離が近くて思わず後ずさると、隣ではギロッと睨んでいる袴田くんがいるのに気付いた。状況がシュールすぎて怖い。
「そんな警戒しなくても平気だって。これを渡したかっただけだよ」
近江先輩はポケットから『おんど食堂…特別券五〇〇円』と書かれた食券を二枚、私に差し出した。それぞれ端の方に「日替わり」「肉団子」と書かれている。
「久しぶりー。元気ぃ?」
「元気……って、そんなに日が経ってないですよね?」
「ごめんね、井浦さん。事前に言っておけばよかったけど、連絡先知らなくて」
「う、ううん。びっくりしただけだから。来てくれてありがとう」
『げぇっ……』
ふいに嫌そうな声がして見ると、袴田くんが先程と打って変わってげっそりした顔をしている。近江先輩は直属の先輩ですごくお世話になったと聞いている。怪訝そうにしているのも照れ隠しだったりするのだろうか。
『……今、照れ隠しとか考えただろ。残念ながら本心だ』
鬱陶しいと面倒臭がっている一方で、口元が緩んで嬉しそうに見える。本人には言わないでおこう。
近江先輩は在学中は「最強の自由人」の異名を持つ不良だったと聞く。実際に会った時も怖いイメージはなかったけど、私が知らないだけで、二人しか知らない一面があるのかもしれない。
そういえば岸谷くんはスマホに表示された文面だけで震えあがっていたっけ。
「きょ、今日はどうしたんですか?」
「可愛い後輩の最後の文化祭を見に来たに決まってるだろー? あ、大晴は俺が連れてきた」
「ちょうど北峰のアニメ同好会に顔を出そうと思っていたんだ。少し前にネット上で意見交換会をしていて――」
「なにより、井浦チャンに会いたかったから来ちゃった」
ニッコリと満面の笑みを浮かべて近江先輩が言う。不用意に距離が近くて思わず後ずさると、隣ではギロッと睨んでいる袴田くんがいるのに気付いた。状況がシュールすぎて怖い。
「そんな警戒しなくても平気だって。これを渡したかっただけだよ」
近江先輩はポケットから『おんど食堂…特別券五〇〇円』と書かれた食券を二枚、私に差し出した。それぞれ端の方に「日替わり」「肉団子」と書かれている。