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 学校に向かう電車に揺られる中で、私は一ヵ月前に掲載されたネットニュースを見直していた。
 ここに書かれている「北峰高校に通う男子生徒」というのは当然袴田くんのことだ。記事には警察が捜査を進めているとあるが、その一週間後に事件性はないと判断され、事故として処理されてしまった。

 しかし、一ヵ月経ったこのタイミングで、その場にいたという不良仲間の一人がここだけの話だと言って岸谷くんに事故当日のことを話したらしい。
 その話によれば、信号待ちで大勢の人が立ち往生している中には袴田くんの姿もあり、北峰の制服を着ている生徒もいたという。
 交差点には信号が切り替わると同時に動き出した大きなトラックが横断歩道に差し掛かった瞬間、袴田くんが背中を押されたように道路に飛び出してきた。
 袴田くんは倒れる間際、歩行者用の信号機の下で待つ人たちの方に振り向いて何かを呟いていたらしい。しかし、それはトラックの運転手が急いで踏み込んだブレーキ音でかき消され、誰も聞き取れなかった。
 その場にいた不良仲間の彼は、袴田くんとは離れた位置にいたこともあって、飛び出した人物が袴田くんだとは気付けなかった。だから救急車に運ばれる際に見えた金髪を見て、大層驚いたそうだ。

 もし彼が本当に事故死ではないとしたら、この不運で理不尽な終わり方に納得できない袴田くんが、成仏する前に復讐を企てているという仮説が浮かんだ。現に彼は今まで頑なに戻ってきた理由を聞かせてくれなかった。他にも理由があるかもしれないけど、これが一番有力なのかもしれない。
 ……考えたくは、なかったけれど。