ストリートライブが終わると、次のコーナーが始まる前に私達は中庭を抜けた。
 廊下に展示された校内新聞を流し読みしながら、佐野さんが船瀬くんに問う。

「淳太のところは何やっているの?」
「お化け屋敷です。別のクラスと被っちゃったんですけど、僕らのほうが怖い自信がありますよ!」
「おおっ! いいね、後で行こうよ」
「あと明日のストリートライブに、野中と僕で漫才します」
「漫才? もしかして夏祭りの?」
「はい、夏祭りが終わった後すぐに野中から練習メニューを渡されました」

 口約束がこんなに早く形になるとは。でも心なしか船瀬くんの表情は嬉しそうだった。以前の彼とは比べ物にならないくらいほど活き活きとしている。最初は心配していた佐野さんも、今では船瀬くんを引き連れてカフェ巡りをしているらしい。傍からみれば姉弟のようだ。

『あの泣いてるだけだった奴が、よくここまで明るくなったな』

 二人から一歩後ろを歩く袴田くんが呟く。心配していた人はここにもいたか。

「そういえば、金髪の人の名前だけでも教えてくださいって言われてるんだけど、教えていい?」
『絶対教えるな。どうせ調べれば出てくるんだから』
「袴田くん、本当は照れてる……?」

 そう尋ねると、袴田くんは鼻で笑ってそっぽを向いた。どうやら照れ隠しが苦手らしい。

「おーいたいた。井浦チャン」