ただ、それと平行して、成仏せず一年もこの世に居座り続けたことも異例だったのではないだろうか。
 異質であること以前に、幽霊である彼には心残りという、この世に留まり続ける理由があった。下手すれば地縛霊になっていてもおかしくない。そして謎の力も加わり、すべてが想定外だったことを強引にまとめていたが為にバランスを崩し、悪い方向へ働いてしまった。――それが生前関わりのあった人の記憶から存在を消すことになってしまったのではないか、と推測された。
 その中でも私や近江先輩、田中くんが忘れなかったのは、中学の件で彼のことをより深く知っていたからだと仮定すれば、時間が経過していたら忘れていた可能性もあるだろう。
 また、完全に忘れていたのに岸谷くんが思い出すことが出来たのは、ずっと私に取り憑いていた彼が回復し、再びこの世に現れたから。
 腑に落ちないことばかりだけど、これ以上考えると頭がパンクしそうだったのでやめた。数十年後くらいに思い出したら、思い出話にして考察してみようと思う。
 なぜ袴田くんに異質な力があるのか。――そのことについては今もわかっていない。

『あれ? そういや岸谷は?』
「委員会の巡回が被って来れないみたい。後夜祭のライブに全力を賭けるって言ってた」
『すっげぇ楽しみにしてたのにな。てっきり乱入するんだと思ってた』
「……さすがの岸谷くんもそんなことはしないよ」

 私がそう言うと、袴田くんは「そっか」と笑ってライブに目を向けた。一緒に声をあげて楽しんでいる姿は、幽霊とは思えないほど溶けこんでいた。